名前も知らない不思議な子

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私が小学3年生の


不思議な子に出会った

なぜ不思議

なのかって?

今回はこの不思議な子の話

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目次

新学期

私が小学3年生になったばかりの春、まだクラスに仲の良い友達がいなくて1人で帰っていた。

私の住む町は、人と自転車しか通れない道が多く(自歩道)、通学路もそれをつかった安全なもので、ガヤガヤと遊びながら通学できる、とても平和でのほほんとした通学路だった。



春のまだ少し肌寒いなかの帰り道にその子と出会う。



その子は、歩道に座り込んで花をじっくり眺めていた。

すべてが不思議?

まず間違いないのは一年生ということ、それは帽子についてるワッペンでわかる。

一番目についたのは、パジャマを着ていたこと、なんでわかるのかって?
私も小さいころ着ていた。
お母さんに頼んでウルトラマンのパジャマを買ってもらった、柔らかい布でできたジャージのようなかたちで、お母さんがお腹を壊さないようにとズボンに上着をインして着せてくれたものだ。
その子が着ていたものは無地で青。

汚い話だが、胸のあたりは食べ汚れのシミだらけで、おまたには粗相の汚れも酷かった。

学校の帽子はかぶらずに背中にビロ~ンと首からかけたゴムで垂れ下がっていて、新しいはずなのにゴムも伸びきっている。

髪型も引いてしまうほど違和感

誰かがザクザクとハサミで切ったような短髪、ところどころに地肌がでて
ハゲが見える。

もう一つはランドセル!

新一年生はランドセルに黄色い安全カバーをみんなつけているのだが、その子は手提げ袋しか持っていない。

私は離れてその子を観察していた、顔はにこちゃんマークそのもの😊。
とてもニコニコと、道端のお花を摘んだり、ちょうちょを追っかけたり、ドスンと座り込んだり、素行も少し変わっているかな?
いや違う、無邪気なんだと思う。

一年生は私よりも早く下校しているはずなのに、きっとこのようにぶらぶらしていたのだろう。

お兄ちゃん、お兄ちゃん!

私は、今もそうなのだが、人の目を気にせずに無邪気に行動している人に、心惹かれ、心を揺さぶられる、なぜかは不明。

その子は毎日いた、時間帯によって場所の差はあるが同じ通りにいる。

何日か過ぎたある日、私から声をかけた、

「早く帰らなくて大丈夫なの?」

不思議な子

うん!大丈夫
ねーねー
お兄ちゃん

お兄ちゃん
一緒に遊ぼ!

私には兄しかおらず、「お兄ちゃん」と呼ばれることに憧れもあった。

とても人懐っこい可愛い子。

話してビックリしたのは、女の子だったこと

無造作に切られたハゲた短髪に、青のパジャマ姿で勝手に男だと思っていたからだ。

これもそばによって気づいたのだが、顔は目ヤニやら鼻水の固まったものやらで汚れ、口の周りは袖で拭いたのだろうカサカサにただれていた。

パジャマも(洋服)もいつも同じで汚れていて、匂いも臭かった。

それでもニコニコ楽しそうにしているので、私も一緒に遊びながら帰った。

途中から道が別々になるのだが、その子は

不思議な子

お兄ちゃん
お兄ちゃん
もっと遊ぼ

もっと遊ぼ

その子は必ず、お兄ちゃん、お兄ちゃん、と2回言うのだ、なぜかその
2回がわたしの心に刺さる。
延長して少しだけ遊ぶが、キリをつけて帰ると。とても寂しそうな顔で手をいつまでも振っていた。

そんな日が一週間も続いたある日。

突如その子がパジャマの上着をガバット上げてお腹を見せた!

私は、ビックリ!

まだ幼児体系がのこるそのお腹には、大きくアルファベットのLのような縫った傷跡があって、一目で簡単な病気ではないことがわかる。

不思議な子

お兄ちゃん
お兄ちゃん
これすごいでしょ
ずっと前のだから
痛くないよアハハハハ

私には衝撃で、こんなに小さいのに辛い思いして、容姿も親に見捨てられたカッコで、それでもニコニコ笑っている。

その時の胸が締め付けられるような感覚と、あの子のニコニコした笑顔が脳裏に焼き付いている。

すべてがわかった

いまだにお互いの名前も知らない2人だが、5月になろうとしていた。

無造作だった髪の毛も伸びてきてわかった、やはり女の子だね。

今日もいつもの通りにいた。

不思議な子

お兄ちゃん
お兄ちゃん
ねーねーウチに来て
お菓子あげるからウチにきて

私は興味があった、この子の親にだ、なぜこんな酷いカッコさせているのか、貧乏なのは分かるが、(大きい手術をしたのだから)それでもだ!

いつも別れる場所から5分ほど進んだところにその子の家はあった。

想像していたように、ボロボロの2階建てアパート。

とにかく古くてゴミだまりのようなアパートで、玄関の横には洗濯機やら壊れた自転車、エッチな雑誌が乱雑にあり、その子の家は1階の5軒ある真ん中だった。

不思議な子

お兄ちゃん
お兄ちゃん
ここだよ
入って、入って!

ドアは開いたままになっていたが、家の中にはだれもいない。

玄関のわきが台所になっていて、そこから覗いてすぐにわかったことは、カップラーメンの食べ終わった容器がそこら中に転がっている、洗ってもいないままで。

靴を脱ぐのもためらうくらいに、汚い部屋だったが、とりあえず脱いで上がった。

中に入ると、四畳半一間にもカップラーメンの山とお菓子の食べカスがあり、そこに汚い布団も敷いてある。

その子は私を布団の上に座らせて、食べかけのお菓子(おせんべい)を振る舞ってくれた。

湿気ったおせんべいをひとくちかじって前を見た


その時
私の目に入ったものは
畳の上に置かれた


仏壇


中にあった写真は
この子の母親


それを見た時
すべてがわかった気がした

涙が溢れ
こらえるのに必死だった

開けっ放しの玄関から西日が差し込み眩しくて
目を細めると涙が落ちそうで
おせんべいをこれ以上嚙んだら

嗚咽しそうで
仏壇の写真から目をそらして
天井のシミを見つめた。

私の頭の中にいろいろなものが駆け巡る。

その子のこともそうなのだが、今も忘れないのは、

私はお母さんにものすごく怒ったことがある、

「お母さん!なんでこんなにカッコ悪い洋服買ってくるの!もうバカ!」

母が言った

お母さんが、あんたに似合わない服を着せるわけないでしょ。



自分も親になってわかるが、その通りだ、自分の子供に最高に似合う服を妻は一生懸命にさがしている。

この子にはそんな母親がいない、どんな理由かわからないがこの子が悪いわけではないことは確か。

私は涙をこらえながら

「今日は帰るね、おせんべいごちそうさま」と言って家を出る。

満足そうな顔で手を振っていた。

きっと仲良くなって嬉しい気持ちを、お菓子のおもてなしで表したかったのだろう。

あの子が消えた

この何日かあの子を見ていない。

一年生の帰りは早いから、そんなに気にもしていなかった。

見えなくなって3日が過ぎたころ、あの大きな縫い傷が脳裏に浮かび心配になってしまって。

明日もいなかったら、帰りにそのままあの子の家に行こうと思った。

やはり次の日もいなかったので、あの子の家に行ってみることに。

前に来た時のようにドアは開けっ放しだったので、玄関から声をかける、
「すみませ~ん」

中から汚い無精ひげのおじさんが出てきて、私を見て察したらしく「風邪ひいて寝てるよ」と不機嫌そうに言った。

私は怖くなり「わかりました」とだけ言って帰ろうとしたのだが、この前に二人で座った布団からあの子の視線を感じて、きっと起きている!

そう思った私は、一日のお小遣い50円を握りしめていつもの駄菓子屋に向かった、

30円のすももと(風邪ひいてるときはすっぱいものがいいと思っていた)
10円のチロルチョコふたつ
(チョコは栄養があるとお母さんが言っていた)

駄菓子屋のおばさんにビニール袋に入れてもらって、すぐにあの子の家に持って行く。

「これ渡してください!」

さっきのおじさんが黙って受け取ってくれた。(お父さん)

その時にはもうあの子の視線はなかったから寝ていたのかな。

しかし渡せたからよかった、
私はすがすがしい気分で家に帰る。


しかし
あの子に会ったのはこれが最後だった
正確には会っていないが
最後に話した言葉すら

わからない



お菓子を渡してから
2週間が過ぎた頃に
(私も友達ができ少し距離ができてしまっていた)
もう一度
あのアパートに行ってみると
ドアが閉まり
自転車も洗濯機も散らかった雑誌もなくなっていたのだ




引っ越してしまったのか?

その後
私は一週間ほどアパートの前で
暗くなるまで待ってみた
もしかしたら
あの子がふらっと現れるかも
しれないから

しかしあの子は来なかった

クラスの先生にも聞いてみたが
詳しいことはわからないと言っていた

手紙

不思議ちゃんへ
元気ですか?
お母さんを早くに亡くして大変だったと
思いますが、
いつも笑顔で素敵な子だから
幸せに暮らしていると信じています。

私が後悔して
いることは
あの時一度家に帰って
貯金箱からお金を出し
ゼリーとかもっと栄養のあるものを
届ければよかったのではないか?
ということです
ごめんね

こんな私を
お兄ちゃん
お兄ちゃん
と呼んでくれてホントに嬉しかった
あの時は
素敵な時間を
ありがとう

お兄ちゃんより

あの子が引っ越したことを知ってから寂しくて仕方がなかったが、いつの日か忘れてしまっていた、
ここに書くまでは。

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ここまで読んでいただきありがとうございました。

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • 後半涙ぐんでしまいました。
    不思議ちゃん、元気に過ごせていると思います。

    ワニオさんの「思い出日記」を読むたびに、自分の幼少期も思い出してノスタルジーを感じてます。
    赤ん坊の頃に強盗に入られたり、雲梯(うんてい)の上を歩いてたら隙間から落下して死にかけたり、チャリンコでライダー乗りしてたらトラックに轢かれかけたり・・・よく今まで命があったものだと、感謝する毎日です。
    いや、もちろん心温まるエピソードも多々あるのですが、それは後々ブログで書く・・・日が来るかもしれませんので、その時をお待ちください^_^;

    • 有栖怜音様コメントありがとうございます。有栖様も素晴らしいエピソードをおもちなのですね。
      有栖様は強運の持ち主なのでしょう。コメント励みになりました。

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