憧れていた女子に
「私もあなたのことが気になっていたの❤」
こう言われたらどうしますか?
まずは何をしたらよいのですか?
小学生ならこうしろ!
中学生ならああしろ!
高校生ならこんなことしろ!
どこの本屋さんに行けばそのテキストブックがみつかりますか?
わかりません
円周率のようにずっと終わらない計算をしていた男子のお話です
\前回のお話はこちら/
手紙をもらったらどうするの?
突然のガッキからの手紙にビビりまくった。
クラスは違うが、同じ陸上部で朝練も午後練も一緒なのに話したことは一度もない。
というか、ガッキが話をしているところ見たことがない、女子同士でさえ「うん、うん」とうなずく程度なのだ。
小学校も別だったので、実際にガッキのことは何も知らなかった、ただ内田有紀にクリソツなルックスと推定Fカップの破壊力抜群なダイナマイト、それに足の速さで好きになってしまった。
そんな憧れ女子が急にリアルな存在になって戸惑う。
とりあえず洋子に相談。
洋子「返事を書きなさいよ!」
「俺、字汚いし、何を書いていいかわからないからさ」
洋子「自分の好きな気持ち書けばいいじゃん」
(ボーイッシュな髪型に大きいお胸がギャップ萌えで好きです。なんて書けるか!)
洋子「とにかく書きなさいよ、私が渡してきてあげるから」
はっきりと覚えています、初めて書いた返事はこちら
洋子にお願いして、女子で流行っている折り方で折ってもらった。
見ちゃおーかなーなんて茶化しながらも、すぐに洋子は渡しに行ってくれる。
洋子けっこういいやつ。
ここから手紙のやりとりが始まった。
と言っても私が書いた手紙はこれ一通のみで、後は毎日ガッキが洋子を通してくれたもの。
ここで大きく変わってしまったことがひとつある。
それは、ガッキが私のことを好きかもしれないと思ったら、今まで見ていたガッキの暴れFカップを見ることができなくなってしまったこと。
それには理由がある、ガッキの素行はとにかくデカイ胸にコンプレックスをもっていて、極端に隠そうとしていたから。
大人になれば自慢できるのかも知れないが、今の段階では目立ってしまって嫌だったのだろう。
それをガン見していることがバレたら、気になるワニオ君を解消されてしまう。
それは困る、ひじょ~に困る。
正直な気持ち!
少し遠くから憧れていた方が
よかった
バレないようにFカップを眺めて
妄想していた方が
楽しかった
始まれば終わりがくる
そっちの恐怖のほうが勝っていた。
そんな中学1年生のワニオでした。
2人で帰ったけど
ガッキは毎日手紙をくれた。
でも実際に渡してくれたのは、初めの1回だけであとは洋子経由だった。
部活の時もなんだか今まで以上に離れて感じて、今までも近くはないけど。
ガッキの手紙の内容は、ほとんど自分の身の上話。
家族のことが多かった、お父さん、お母さん、そして歳の離れた弟のこと。
両親は共働きで、弟の夕飯をガッキが作っていると書いてあった。
そして、朝早くお起きて1人で走りこんでいる話し、同じ距離を毎回タイム計りながら走っていると。あの速さは努力で培ったもののようだ。
話もせず、顔も見合さないまま1週間が過ぎた。
私は、その手紙を読んでいるだけで満足だったのに、手紙にはこんなことが書いてあった。
今日一緒に帰りませんか
恐れていたことが起こってしまった!!
そもそも学校を挟んで家は真逆、ガッキの家は比較的学校に近いが、私の家は学校から15分は歩く距離。
どの道をどうやって、何を話しながら歩けばいいか分からない。
洋子に相談!
「知らないわよ、ばか、自分で考えなさいよ」
つめたい。ひじょ~につめたい。
部活終わり時間までのことは何も覚えていない、ただ胸のあたりがハラハラしていたことは確か。
部活中、ガッキはいつもと変わらずクールに淡々とトレーニングをこなす。
私は何ひとつ身が入らないまま部活終了。
恥ずかしかったが、友達には訳を話して先に帰ってもらい、ガッキが待っている校門わきの先生専用駐車場に向かう。
すでにガッキは待っていた。セーラー服にぶらんと下げた両手でカバンを持って。
見た瞬間!だっちゅ~のポーズだ!!と思ってしまう自分が嫌いだ。
私は、黙って頬笑んでみた。
ガッキも黙って頬笑んでくれた。
私は、黙って、指であっちを指す。
それは、私の家とは逆、ガッキの家の方向だ。
ガッキは、黙ってうなずく。
2人で黙ったまま歩き出した。
すきで黙っていた訳ではない、頭の中では今日一日中考えていたことを話そうと思ったけど。
どれを言っても嫌われるような気がして、
言葉を出せなかったんだ。
でもね、横目でチラチラ至近距離のワガママボディーは見ていたよ。
ゆっくり、できるだけゆっくり歩いた。黙ったまま。
気づくとガッキの家近くの曲がり角に、そこでガッキは黙ったまま止まる。
私も気づいた、男子と帰っているところをご近所さんに見られたくはないだろうと。
私は、何も言えないままガッキを見送る。そうすることしかできなかった。
ガッキは、少し不満そうな顔で振り向き歩いていく。
その背中を見ながら、
「もう終わった」
と悲しい気持ちになる。
ガッキは角を曲がりすぐに見えなくなった。
それでも私は、見送る。
違う、反省と後悔と情けなさとFカップを触れないショックとで立ちすくんでいただけ。
と
急にガッキが角から走って現れた!!
手紙を持っている。
そして手紙を渡しながら。
「送ってくれてありがとう、またね」
私が手紙を受け取ると、すぐに走っていってしまう。
でも、
またね、
いったよね、
いったよね、
間違いなく、「またね」って言ったよね!
きた道をおもいっきり走った!
全速力で走った!
鞄の中身が飛び出そうなくらい走った!
心臓が止まってもいいくらい走った!
やったぜ、やったぜ、やったぜ、
やったぜーーー!!
コケそうになって止まる!
ハァ ハァ ハァ ハァ
そのまま通り沿いの公園に入る、なぜかって?
ガッキの手紙を家まで待ちきれないからーーー!!
息を整えて、木でできたベンチに座る、公園にはもう誰もいない、まぶしすぎるほどの西陽が黄金色に公園の木々を照らす。
複雑に折りたたんだ手紙を震える手でバサッと開いた。
すぐ目に入ってきた言葉!!
助けてください
えっ
つづく
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