僕とテツの物語 最終話 ごめんなさいテツ

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人間は勝手だ!

イヤ 違う

僕が勝手だったんだ


子供だった僕。


なぜ、あんなに自信をもって面倒をみると言ったのか?


なぜ、言ったことを守れなかったのか?


自分の気持ちがわからない、楽しいことだけをやりたい、


コントロールがきかない、ガマンができない。


反抗期のせいにした僕の罪。


ドラマのようにはいかない物語です。


\僕とテツの出会いはこちらから/

\ワンちゃん大好きな人必見/

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目次

僕を呼んでいたテツ

前回のお話はこちら


僕とテツが行くいつもの散歩道
この先にテツの好きな空き地がある

とにかく散歩に行くのがめんどくさかった僕。


首輪が抜けてテツがひとりで散歩に行っちゃったと、お母さんに噓をつこうと考えていた。


その時に首輪の穴を1つ緩めたんだ、でも言い訳がある。


思いとどまって散歩へ歩き出したのはたしかなこと、首輪は緩めたまま。

いつものように空地へと向かうテツ!


いつもと違うのは僕だ、足を止めてテツのいうことはきかない!


僕は一歩も動かない、いや、動けない!


お互いが反対の方向へ引っ張る!


そして!!



首輪が外れた!


そのままいつものように空地へ向かって走っていく!


僕は追いかけない。


その場で走っていくテツを見ている。


遠く道路の先、空き地に入ったテツ、


一度道路に戻り僕を確認する。


何回も何回も、空き地に入っては道路に出て僕を見る。


テツ

ハッハッハッ
ハッハッハッ
(こっちだよ早くおいでよ)



僕にはテツがそう言っているように見えた。



わかっている、わかっているけど。




僕は戸惑っていた

自分では処理ができない気持ち

僕を待ち続けるテツ

自由なのに

自由じゃない

子供なのに子供じゃない


僕のバランスが

崩れていた

僕はそのままテツに背を向けて家に帰る。


その時もテツが空き地から道路に出て、爪がアスファルトに削れる音が聞こえていた。

ワニオ

僕は自由になりたいんだから・・・
テツだって勝手に散歩行って自由にすればいいんだ・・・

と勝手なことを考えながら。


そしてお母さんには気づかれないように、そっと首輪のついたリードを裏に置いて、お母さんに渡されたお散歩後のテツのお水皿も、黙って持って行ったふりをした。


寝るころには思っていた、あしたの朝にはテツは家の裏に帰っていると。


次の日、朝お母さんにテツのご飯を渡されて裏に行く。


テツはいなかった。


昨日の夜のまま、お水も飲んだ形跡もない。


それでも、学校が終わるころには帰ってくると思っている、あの有名な忠犬ハチ公はひとりでおうちと駅を歩いて行ったんだから。

大変なことに気づく

学校が終わり家に帰ると、お母さんが待っていた。

お母さん

ワニオ、大変なのよ!
テツがいないの、首輪が外れてしまったみたい!

ワニオ

へ、へ~
そうなんだ!朝は、い、いたけど…

噓をついた。


午後になっても帰ってこなかったテツ。


それでも僕はまだ、心配をしていなかった。お母さんがある言葉を言うまでは!


ワニオ

テツは頭いいから夜には帰ってくるよ
僕は遊びに行ってくるね!

お母さん

朝はホントにいたの?
テツの朝ごはんもお水もそのままだったわよ!
もしも、昨日の夜中からだったらどうしましょう

ワニオ

えっと、えっと
朝はいなかったかも、僕、忙しかったからパッとおいてきちゃったからさ、なんで?

お母さん

もし昨日だったら
市役所の野犬駆除の日だから

子供の時の記憶なので詳細はわかりませんが、このようなことがおこなわれていた時代でした。


初めて気づいた!自分がとんでもないことをしたと!

市内では野良猫や野良犬が増えて問題になり、毎週水曜日の夜に野犬駆除の荷台が檻になったトラックが走っていた。今ではとても問題になる行為だが、それがまかり通る時代だったと記憶している。

首輪のついている犬や、子犬などは週末に引き取りや保護活動への譲渡もやっていて、お母さんと子犬を見に行ったこともあったが、かなり殺処分になっている。その数も市の広報に載っていた。


急に心臓がドキドキ。


それでも僕は噓をつく!

ワニオ

朝はいたと思うから大丈夫だよ!

あっ、やっぱり遊びに行くのやめて、テツを探しに行ってくるね


午後の3時を過ぎていた、昨日の首輪が外れた場所に走っていく。いない。


テツが走り回っていた空き地にもいった。いない。


いつもの散歩道、ひとりで走る。


昨日の夜になぜできなかったのかを考えながらひとりで走った。

テツーーー!!

どこにいったんだ!


いくつもあるテツとの散歩コース、お母さんも一緒の時はまた別の道、そこも探した。


心当たりの場所はすべて探した。


いない、テツはどこにもいない。

テツ!
どこにいるの?


夕方5時のチャイムが鳴り響く。


僕は、最後にもう一度テツとよくいった公園にいく。


走って息が荒いのか、そうではなく動悸なのかわからないが、胸が苦しい。


少し気持ちが悪くなって、ブランコに座った。

思い出の公園


テツとよくいった近所の公園、テツが赤ちゃんの時は、抱っこしてここまで連れてきて放してあげる。


よちよち歩くだけ。


よそ見していてもどこにも行かなかった。




少し大きくなって、やんちゃの時に事件が起きる!


夜の誰もいない公園で放してあげると、公園中を駆け回る、一周すると僕のもとへやってきてハアハア。そしてまた走り回るというテツの遊びだ。


何周目かのとき、テツがものすごいテンションで僕の所へかけてきた!


首をブルンブルン振りながら!


そして僕の目の前に何かを放り投げた!


そしてテツは嬉しそうにシッポをフリフリ。


暗くてよく見えない。


近づいて確認!

ワニオ

ぶわーーーー!!
テツーーーー!!
ネズミだ!!

血だらけのネズミの死がい!


僕は、しりもちをつき腰をぬかした!


とその時テツが僕に抱きついて、僕の顔を舐める!血だらけの口で!!


ワニオ

テツーーー!!
テツーーー!!
やめろーーー!!
やめちくりーーー!!

僕は、怒った!

ワニオ

テツのバカ!
テツのバカ!
なんでこんなもん持ってくるんだよバカ!

テツ

ハウ?

その後、テツの口も僕の顔も公園の水道で死ぬほど洗ったことは言うまでもない。


そんなことをひとり思い出していた。


僕はなんで怒ってしまったのだろう?


きっとテツは、

テツ

ねえねえワニちゃん
ぼく、こんなものみつけたよ!
見て見てすごいでしょ!
ほめて!いいこいいこして!

て、言いたかったんだろうな。


僕は何もわかってはいない。


バカで噓つきで自分勝手などうしようもない自分に嫌気がさした。


僕はうそつきだ



夢の中には…

テツがいた家の裏には、少しの距離を自由に歩ける長いロープ、いつも嚙んでいた食べかけのガム、外れた首輪、テツの毛だけが寂しく残る。


そのもっと奥には、お母さんが買ってきたドッグフード5㎏。


大きくて頑丈な紙袋に入っていた。まだ開けてもいない。


お母さんはテツのために買っていたんだ、ずっとずっとテツと一緒にいるために。


それなのに僕は…


その日から毎日探した、お母さんも一緒に。


学校終わってからひとりで探して、夕飯を食べてからお母さんと探す。


お母さんが市役所にも電話をしたが、首輪のない犬のことはわからないと言われる。


首輪が外れるようにしたのは僕だ。


しかし、お母さんは自然に外れてしまったと思っている。





夢をみた。


テツの夢。


夢に出てくるテツは不思議と赤ちゃんだった、少し離れた場所から僕をジッと見つめるだけ。





起きると泣いている、泣いた記憶はないけど、目の周りがカピカピになって目ヤニもいっぱいになって。


思ってはいけないけど、生きていると信じたいけど、駆除トラックに捕まって家に帰れないまま魂がさまよっているのかと。


僕を恨んで、呪っているんじゃないかと。


この悩みを僕は誰にも言えずにいまにいたる。(今初めて言いました)


誰もいない時に、仏壇のお線香を一本裏のテツがいた場所に供えたりもした。

1ヶ月は探していたと思う。


それでもテツは帰ってはこなかった。


お母さんは言う


お母さん

テツは自分の意志で出ていったのよ!
自由になりたかったのね、気ままに好きなように生きているわよ。
やっぱり、野良は野良の生き方があるの。
お母さんがしっかり首輪をつけてあげなかったからこうなったのだけど。でもこれでいいのよ。




いつの日かテツを探さなくなり、裏の首輪も食べかけのガムも片付けられた。


ドッグフードは近所の動物病院にあげてきたらしい。


テツ! テツ!





首輪が外れて走り出した後ろ姿、遠くの空き地からひょっこり顔を出して僕を呼んだ。


それが僕の見た最後のテツだった。

ごめんなさいテツ、僕の誓い!

すべては僕から始まった。

5年生の寂しかった僕。



その時、突然現れた赤ちゃん犬


柴犬の雑種
名前はテツ



ヤンキーに連れ去られたテツを
僕が取り戻したんだ


ビニール紐で
ぎゅうぎゅうに縛られていたテツ
かわいそうだったけど
そのままのほうが幸せだったのかな



僕はいっぱい噓をついた

僕が責任もって面倒見る!
一生一緒にいるもん!
一生大切にするもん!



テツが一生懸命にご飯を食べる姿が大好きだった


食べるよりこぼしているほうが多い
でも一生懸命なところが好き



玄関にいた頃は毎日
2人並んで添い寝


ここにピッタリハマって寝ていた



ドライブもいったね

僕の膝にう〇ちしちゃったよね



お風呂も好きだった

毛が濡れると
ちっちゃくなっちゃうテツ



僕が盲腸で入院していなかった時
いっぱい
心配してくれた


シッポをフリフリ
お出迎えしてくれて
顔をべろんべろん

なめてくれたね



いつでも
どんな時でも
変わらずに待っていてくれた


変わっていく僕を
責めもせずに

テツ!

僕はもう無責任なことをしないよ

守れない約束はしない


自分の心に負けない


ごめんねテツ

ごめんなさいテツ


その後

僕は一度も動物を



飼ってはいない


おわり

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • ワニオさん、切なすぎます。子供の頃って重大さがわかっていないから嘘つくことあるんですよね。
    お母さんは気づいてたかもしれませんね。子供の嘘ってわかりやすいから。正直、子供の頃のワニオさんにこらーって言いたいですが…。動物を育てるって本当に大変です。ましてや話すことのできない動物には愛情込めて接したいですね。

    • めめ様コメントありがとうございます。
      怒ってください!こんなワニオを怒ってください。
      テツごめんなさい。
      きっとお母さんはすべてわかったうえで責めなかったのかもしれません。
      動物の命を預かるということは簡単なものではないと、今も心に刻んでおります。

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