スタンド・バイ・ミーに憧れて 【ボロボロの心 溢れた感情】 中学2年生 <第3話>

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ただ友達を助けたかっただけ

イジメている人が


許せなかっただけ

映画 スタンドバイミーに

出てくる正義感が強く友達思いの

クリス(リヴァー・フェニックス)ならそうしたはず

俺もそうしただけ

しかし現実は厳しかった

ボコボコにされてしまった男子のお話

\シリーズ第1話はこちら/

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目次

気絶

気を失っていた



殴られ過ぎて、


だんだんと気持ち良くなって、


だんだんと音が聞こえなくなって、


だんだんと寒くなって、


最後は目が見えなくなった。






救ってくれたのは村井。(バカな先生)


「オイ!大丈夫か!しっかりしろ!」


その声と同時に抱きしめられている温かいぬくもり。凍りついた身体を溶かすようなぬくもり。


訳の分からない安心感の中、目を覚ました。

ちょっと待ってくれ!
もともとコイツがちゃんと授業をしていればこんなことにはなっていない。
コイツが10組のエッチなえくぼと半乳出し先生の所に行っていなければ。

バカヤロー!!

スクロールできます

村井が焦っているのはわかった。
大丈夫か、大丈夫か、と連呼していたから。
そのまま俺を抱きかかえて体育館を出た、それがわかったのは急に眩しい太陽が目に入ったから。

しかし、そこでまた記憶を失くした。


ここでひとつ謎がある、なぜこんなにも奴らが俺を嫌ったのか?
それには理由があった、4人のうち3人が1年生時、学年のマドンナ新垣さん(通称ガッキ)と同じクラス。俺がガッキと付き合っている噂が流れた時にいち早くちゃかしに来た奴ら。(もちろんガッキの事が好きだったのだろう)
その時から俺を目の敵にしている。

そして、その後ガッキが別の学校の男子と付き合っていることを聞いて、みんなの前でガッキに誹謗中傷を浴びせていたのもこいつらだ。

\ガッキとの出会いはこちら/

保健室

遠くで誰かが話をしている。かすかに聞こえてきた。


救急車呼ぶ? 鼻血が止まらない? 頭動かさないほうがいい?


ぼーっと聞いていた。


ん?


あっ、俺のこと?


俺はベットの上にいた。


思い出した、俺は殴られていて気を失ってしまったんだ。


気はしっかりしている、救急車なんて大げさなことはやめてほしい、カッコ悪い。


飛び起きて!


「先生、俺、大丈夫だから!」


叫んだ!


と同時にあばらに激痛!!


「あうっ!?」


と鼻に刺さっていたティッシュが吹っ飛んだ!また鼻血だら~。


話していたのは、バカな村井と保健室のババア先生。


どっちもろくでもない。


「あ~そ~、じゃあ、少し休んだら念のため病院いこうか」


とババアがゆっくり言ってカーテンを閉めた。


カーテン閉めてひとりにされたけど、


奴らに負けてしまった事が悔しくて、悔しくて仕方ない。


腹も立つ、煮えくり返ってきて。


考えてしまう、殴られて、膝蹴りくらって、その後殴り返そうとした時に後ろの奴が俺の後頭部を殴って背中を蹴らなければ、もう少しやれていたかもしれない。


なんて、終わったことを涙ぐみながら、クドクドと後悔。


そんな自分が嫌いだったりするが。


鼻にもう一度ティッシュを詰めながら、起こしていた上半身を寝かせた。


「痛っ!!」


やはり、あばらに激痛が!息が吸えなくなるほど痛い、槍で刺されているような。


気になってシャツをまくり上げた!


血の気が引いく。


確実に形が変わっている!左のあばらが曲がっている。右と比べても明らかに違う!



「先生~!!病院連れていってくれ~!!」

・・・・


・・・・


シーン


あれ、誰もいね~じゃねぇかバカヤロー。


ベットサイドのナースコールを探したが、そんなものはない。




仕方ない、また横になる。フーッと逆に落ち着けた気がした。


このあばら元に戻るのかな?そんなことも考えた。






キーンコーンカーンコーン


気が付かなかったが休み時間っだったようだ。ババアどっかで休んでいたな。


3時間目が始まるチャイムだった。


ババア先生が、のこのこと帰ってきた。


「あたしの車で病院いこうかね」ババアが言う。


ババアって、おばあちゃんだよ!


大丈夫なのか?


不安しかない。

外科胃腸科

待合室
そっくりそのままこんな感じです

手前に出入り口、受付、診察室がある



保健室には担任も駆けつけて「大丈夫か」と心配してくれたけど、俺は何も話さなかった。村井はもういない。


ベットから起きてみたけど、とりあえずは大丈夫そうだった、ただ大きく息を吸いこむと激痛がはしる。


身体中は鈍く痛いし、顔はひどいもんだ。


両方の目の上は腫れているし、ところどころ切れて血がにじんでいる。


一番カッコ悪い顔になっていたのは、唇だ!


殴られた時に拳と歯に挟まれていたからだろう、見事に腫れあがっていて、まるでキン肉マンの唇のようだ。



その唇もところどころ切れている。


この感覚も説明できる。


そう、歯医者さんで麻酔を打った時のよう、感覚では唇が10倍くらい大きくなっているようで、しかも、うがいする時にコントロールできずにピュッとお水だ飛び出てしまう。


リアルにそうなっている。


その感覚が気になってペロペロなめてしまうから、痛々しくカッコ悪い。


完全に顔面をハチに刺されたツラ。


あばらが痛いので、そーっと息を吸いながら歩く。ババアの車まで。


ババアはすでに運転席に座っていた。俺は助手席に乗り込む。


ドア開けるときも いててて・・・

座るときも いててて・・・

ドアを閉めるときも  いててて・・・

歯を食いしばって言わなかった。
(ババアやってくれよ!!)


病院は歩いてもいけるほどのところ。ババアは自転車並みのスピードで車を走らせる。



○○外科胃腸科到着。


待合室はイメージ写真の通り。


この病院は評判が悪くいつもガラガラだ、でも、そんなところが好きで個人的にもお世話になっている病院。


ババアが受付をしているいる間に、俺は受付の真ん前に座った。


受付をすませてババアも俺の隣に腰掛けて、フーッとため息を吐きながら言った。


(このため息が、ホントにイラついて嫌だった)


「なんでケンカなんてしたの?」


待て、ババア!




俺は

ケンカを


したわけじゃない

友達を


助けたかっただけ







ババアの言葉で

涙がにじんできて

鼻の頭が痛くなった


でも泣かない!!

男だから




ガマンした

情けない俺

確かに周りから見ればただのケンカだ。


俺はババアをシカトして下を向いた。涙はどうにか引っ込んだようだ。


その間も、腫れた唇が気になってペロペロ舐めていた。


シカトしている俺にババアはイラついたのか大きな息を立ててため息。ムカつく。


「ワニオさんどーぞ!」空いているだけあってすぐに呼ばれる。


ひとりで診察室に入る。


頭のハゲたおじさん先生
「今日はどうしましたか?」
(今は死語だろうか、見事なバーコード頭)


「学校で、ちょっとケンカしてしまって、あばらのあたりが痛くて」
(ケンカではないけど、めんどくさかったので)


バーコード先生は俺のアゴ先を手でクイクイと左右にふってから、シャツを捲し上げてあばら骨を手で触った「あ~派手にやったね、じゃあレントゲンを撮ろう」と俺のハチに刺されたような顔を見て言った。


ここは受付をやっているお姉さんが看護師もやっている。レントゲン室に案内してくれた。


おばさんだけど(当時の俺は14歳、おばさんと言っても30代)、かなりのお胸の持ち主。


ピッチピチのボディコンなみのナース服、トンガッタお胸が目の前に。


甘えたくなった。


村井ではなく、この人に抱きかかえてもらいたかった。将来は絶対に看護師さんと付き合うと強く心に誓う。おバカ男子は単純だ。

脱線しました。


レントゲンを撮った後もう一度診察室に。


テレビドラマで見るようだった、テカテカに光ったボードに写真をサクッとあてがい言った。




「ほら!ここ!2本ヒビはいっているね」


俺はビビッて唾を飲み込み、先生に「ちょっと形が変わっているのは治りますか?」と聞いた。


「いや、これはこのままかな、湿布貼るくらいしかないんだよね」


先生は続ける


「少し曲がっているくらい日常生活には支障がないから」


違う、違う

そうじゃないよ先生

俺が言いたいのは

この曲がったあばらを

見るたびに今日のことを

思い出して生きていかなければ


いけないのかってこと




ショックだった!!

(実際、今も曲がっている)


診察室を出た、ババアは「どうだった?」と聞いたが、シカトした。下を向いてシカトした。


シカトしたままババアの横に座る。と同時に涙が溢れてきた、下のまぶたいっぱいに溜まった。


でも泣かないババアの前で泣いたらダサすぎる。腫れた下唇を噛んだ。痛い。


もう疲れた。


泣くのをガマンすることに疲れた。


こんなに泣くのをガマンすることって疲れるのかな。


なんだかすべてが嫌になって、この先ずっと奴に曲げられたあばらを見ながら生きていかなけばいけないことも。


目の前が真っ暗闇ってこういう事?


涙をかき消すようにババアに言ってしまった!


「帰れ!」


下を向いたまま!


「俺、ひとりで帰れるから」


ここからなら家も近い。


「このまま家に帰るから」


カバンも教科書も学ランも学校だけど、そんなものどうでもよかった。


もう二度と学校なんかいかない!!


「早く帰れよ」


ババアは俺の様子をジッと見つめてから「じゃあね」と言って、受付に向かって何かを話した後出入り口に向かった。


後は湿布をもらうだけ。





待合室でひとり。




すぐに後悔、不安でいっぱいになって。カッコつけてはいるが結局子供。

何も言えない

下を向いていたが、ババアが出ていくのを確認しようと顔を上げた。


ババアとすれ違いに見慣れた人が入ってくる!




お母さん












俺を見つけるなり「ワニオ」と大きな声を出して。


仕事をしているのに、職場から駆けつけたようだ。


緑色の事務服に灰色のズボン。


(お母さんの仕事は町工場の事務員、病院からは歩いて10分くらいの場所にある。最近働き始めたばかりで、出てきて大丈夫なのか心配にもなった。)


スリッパも履かないで、俺の前まできて、両手で座っている俺の顔を両手ではさんで持ち上げた。


(お母さん痛いよ)声にはなっていない。腫れてところどころ切れた唇がぷにんと前に出る。


お母さんは俺のハチに刺された顔をジッと見つめて涙ぐんだ。


お母さんの手はいつも温かいのに、今日はすごく冷たく感じる、それが気持ちいい。その時気づいた、腫れあがって熱をもった自分の顔に。


歯を食いしばった。奥歯がキュッとなるまで。


お母さんの手を払い下を向く。泣くことをガマンするのに疲れ切っているんだから。


黙ってお母さんは隣に座り。その瞬間フワッとお母さんの匂いを感じる。


ホッとする匂いに俺はまた歯を食いしばる。


黙って座るお母さんに話そうと、


「俺はケンカをしたんじゃない、人を助けようとしただけなんだ、お母さんがいつも言っているように人のためを思って頑張ったんだ、お母さん、俺、頑張ったでしょ」


と言いたかった。


でも、もう言えない、ガマンすることに疲れちゃって、口を開いたら泣いてしまう。


何回か言おうとしたけど、涙が。


歯を食いしばるアゴも疲れた。


少し待って話そうとしたけどやはりだめ、涙が。


お母さんは黙って下向く俺を見つめている。


深呼吸をして話そうと思った。お母さんには聞こえないようにそーっと深呼吸。


そして、


お母さんの方に視線を上げながら、髪の毛をかきあげる。


なんだか変な感触がして!




かきあげた手には

髪の毛が

どっさり抜けた



手の指と指の間に

みっちりと髪の毛が



抜け落ちていた。





髪の毛を掴まれて引きずり回されたからだろう。






・・・・・・




・・・・・・






心がプツンと音がした。








涙が

流れた

声を出して泣いた

嗚咽して泣いた

もう止まらなかった


赤ちゃんのように

泣いた





お母さんが抱きしめてくれる

お母さんの胸で


泣いた




何年ぶりだろう・・








つづく

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ここまで読んでいただきありがとうございました。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 苦くて辛くて、でも青春って感じです。友 達を助ける気持ちが何より大事。ばばあも村井も中学の頃のワニオさんにとってはうざい存在。大人になったワニオさんだったらどんな対応が正しかったのかお二人のその時の心境を察する事ができるのではないでしょか。涙が出て止まらず何も言えなくなる感じ、わかります。中学時代は何かと反発したくなるし気持ちも素直に出せない時期。その反面甘えたい気持ちもある。
    お母さまの顔を見た瞬間安心した状況が手に取るようにわかりました。そしてお母さまの変わり果てた息子の姿を見た瞬間の気持ちもわかります。仕事を抜け出し駆け付けたお母さま、病院につくまでのお気持ち察します。お母さまの存在って大きいですね。

    • めめ様コメントありがとうございます。
      なんだか自分がとんでもないことをやらかしてしまったようで、おっしゃる通り苦しくて辛くて、でもカッコつけなければいけない大人ぶらなければいけない。と頑張っていた時にお母さんの顔。なにもかもが涙と共に流れていった感じがしました。母親の存在は偉大です。

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